タカコのびっくりレポート

タカコが日本を離れてから、日々のできごとや見たこと聞いたことを、みんなにレポートします。お楽しみに!


びっくりレポート003号

10月1日(水曜日) 晴れ

長老たちがカヌーの正面にどっかりと腰を下ろし、高野(画面左)からの説明を受けた。長老たちは、日本が統治していた時代に教育を受けたために、今でも日本語を話す=10月1日午後3時半、ウォレアイ島で
 ウォレアイに向かう。

 午前8時40分、ヤップ空港から双発のビーチクラフト機で離陸。パイロット2人のほかに、乗客は大人6人と赤ちゃん一人。座席はひとつだけ余っている。

 高度9500フィート、約3000メートルの空を、柱のようにわきたつ積乱雲を左右に避けながら飛ぶ。

 出発前には、一人一人の体重、手荷物を測り、一人当たり30ポンドの許容範囲を超えると1ポンド当たり50セントの超過料金を取られる。

 パシフィックミッショナリーアビエーション(「太平洋宣教航空」とでも訳すのだろうか)の飛行機は、離島と本島を結ぶ唯一の航空便だ。2週間に一回、往復している。片道150ドル(約1万8千円)は、現金収入のほとんどない離島の人には大変な出費だ。

 州政府が運行している連絡船マイクロスピリット号だともっと安いが、これは一月がかりで離島をめぐる巡回航路なので、時間がたっぷりかかる。

 島は、外の世界とは容易にはつながらない。

 今回の飛行機の中にはサモア出身のタサという女性が乗っている。操縦士の資格も持ち、太平洋諸島を訪れている変った経歴の持ち主だ。ウォレアイの豊かな自然と色濃い伝統社会を、できるだけ保存しながら旅行者も迎えて「エコツーリズム」を実現しようと考えている。

 飛行機に乗る前に、「これを見て」とA4版8枚の紙にびっしりと打ち出した「ウォレアイ観光プロジェクト」という計画書があった。

 観光客には、近代的なパッケージ食料などは持ち込ませずに、地元の食料で地元の伝統的な建物にとまってもらい、豊かな自然をたっぷりと味わってもらう。そのためには、衛生的な調理場、トイレ、ごみ捨て場などを整備しなくてはならない、などという彼女の提案が盛り込まれている。

 飛行機の中で、ズボンをはいているのは2人のパイロットをのぞくと私だけだ。2人の男は青いスーと呼ばれるふんどしをまいているだけだし、タサなどの3人の女性もラバラバと呼ばれる腰巻き姿。赤ちゃんはきれいな西洋風のベビー服を着せられておめかししている。初めての里帰りかも知れない。しかし赤ちゃんが入れられているのは、やしの葉で編んだバスケット。おかあさんは肩からひょいとバスケットをかついで、歩いてきた。

 時速200ノット(約370キロ)で2時間近く。

 澄み渡っていた空が、灰色に霞み始めた。

 ヤップ本島でも、ここ一週間ほど空に煙りがかかったようになっていると、何人かが繰り返していた。フィリピンのピナツボ火山が噴火したときと同じようだという人もいた。 インドネシアの山火事の煙が、この太平洋の島々にまで届こうとしているのだろうか。

 島に着陸するウォレアイ小学校のルイス校長が出迎えてくれた。

 滑走路といってもジャングルの中に一本のコンクリートの道があるだけ。

 まわりの背丈ほどの緑の中からあちこちに人が出てくる。

 週に一回の飛行機便は、島にとっても大行事だ。

 地元の酋長フランシスコさんの家に泊めてもらうことになり、荷物一式を島に3台しかない車の一台で運んでもらう。道といってもやしの木の間をぬうように走る狭い道筋があるだけだ。

 フランシスコさんは、目が悪い。ほとんど見えない。日本語を少し覚えており、「こんにちは」というあいさつに「こんにちは、私はフランシスコです。あんたは日本のどこの村から来ましたか」とゆっくりと話す。昔のおじいさんと話しているような感じだ。

 地元の酋長はこのほかにもいて、一番偉い総酋長(英語では「ハイチーフ=High Chief」と呼ばれている)ら地元の長老たち5人やほかの男たち計20人と、一番の集会所となっているカヌー小屋であいさつをする。カヌー小屋は波打ち際のそばのやしの林の中にある。収められているのは、長さ10メートルもある大型のカヌーだ。

 長老たち全員がそろうまで、ゆっくりと静かにみんなが海をみながら待っている。

 私たちのプロジェクトの説明をじっと聞いていた長老たちが、「よかろう」というような会話をしてくれ、おみやげにもってきたタバコとヤップ本島のビンロウジュの実を全員に分配して、私たちの正式な受け入れが決まった。

 ウォレアイの島は、いくつかの島が輪のように連なった環礁を形成している。上空からみるとまさに大海に浮かぶネックレスのようだ。

 海岸からは向かい側の島がいくつも見えるが、これもちょっと霞みがかかったようになっている。「数週間前からちょっとおかしい。いつもはくっきりと見えるのに」とみんなが話している。

 飛行機のパイロットは、「インドネシアの山火事の煙。いつもの空はこんな濁っていなくて、もっときれいなんだ」と話していた。地球規模の災害は、ミクロネシアの島々にまで広がっていた。

報告/大前純一

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