タカコのびっくりレポート

タカコが日本を離れてから、日々のできごとや見たこと聞いたことを、みんなにレポートします。お楽しみに!


びっくりレポート010号

10月7日(火曜日)

 家族に分配された魚はさっそく女たちが料理します。ぶつ切りにして、しょうゆ味で煮るのが普通です。しょうゆは連絡船で運ばれてきます=4日正午ごろ、ウォレアイ島で

 朝4時半に、泊まっている小屋の入り口をたたく音がした。「カヌーで魚取りに行くぞ」。43歳のピードの声だ。あと2、3人の影がするが真っ暗なのでだれかは分からない。外に出ると寒いと感じる。気温は25度くらいだろうか。

 カヌー小屋の前にサイモンが待っていた。1943年5月生まれの54歳。村では取れた魚の配分を担当する有力者だ。サイモンが真っ暗な海岸で空を見上げて天気をうかがっている。雲があるせいか、星は時折かすんだように見えるだけだ。風はほとんどない。西の空にときどきいなずまが走る。空いっぱいに雲があふれ、まるで嵐の前のように素人には思える。

 カヌーに釣りざおを積み、重い船体をみんなで押して海に浮かべる。何人かの若者が手伝っているように思えるが、これも何人か定かでない。太ももほどもあるヤシの葉のクキを短く切ったものを何本も並べ、それを滑り台にしてカヌーを押し出す。

 パドルで海面をかいで、船はゆっくりと進み始めた。沖合数十メートルに出てから、マストを立て、帆をはる。帆は以前はパンダナス(タコの木)の葉で編んでいたが、第二次世界大戦が終わってからは、外国からの布が使われるようになった。

 浜辺に押し出すときは、実に重たかった船体は、数メートルの微風を受けて歩くような速さで動きだした。海面も真っ暗なまま。風は浜辺の真正面、西から吹いている。進行方向の右手前方から風を受け、船はゆっくり沖に出る。しばらくして今度は左手前方から風を受けるように帆を調整し、今度は北西方向に進む。ヨットと同じで、風上には直接進めないので、風上方向にはジグザグに進む。

 何度か進路を変えた後、いくつか連なっている島と島の間の水路を抜けた途端に、波が大きくなった。サンゴ礁に囲まれた静かな水域(ラグーン)を出て、外洋に乗り出したのだ。風も強くなり、カヌーは自転車でも追い付けないような速さで走り出した。日の出をすぎたらしく、あたりが明るくなったが、雨が落ちてきた。船長のサイモン、帆を操作しているピードのほかに2人の若者が乗っている。

 漁場はラグーンの北西に広がる海で、マグロやカツオの繁殖場所になっている。体長30センチから50センチの若いマグロが群れている場所だ。

 サイモンらは一生懸命鳥を探している。マグロたちがえさにしている小魚の群れを鳥もまたねらっているからだ。つばさの幅が30センチほどに見える黒と白の鳥が、水面をかすめるように飛び交い、ある場所でぐるぐる回っている。

 この日は風が弱く、鳥が集まっている場所にせっかくいってもその時には鳥は別の場所に移動してしまい、鳥を追いかけることだけに時間を使ってしまった。

 一回だけ、全員がびっりっと緊張した時には、前方に何匹かの鳥が行き交い、風も強くなってカヌーが速く走り出したときだ。全員が竿を持って、ルアーを流し始めた。

 カヌーの最後尾に座った若者が、後ろに突き出したルアーの先に向けて、海面からびしゃびしゃと水をかけ始めた。水面ではねる小魚のように見せかけるためだ。海面の下に金色に輝く大きな生き物がいくつも見えた。

 「サメだ。とても危ない種類だ。絶対に海に落ちないように」とサイモンがいう。  サメは魚の群れの回りにいて、釣りに来たカヌーを見つけると針にかかった魚を横取りしようとカヌーの後ろに来るのだ。「だから魚もここにはいるんだ」。

 バシャバシャという音と共に体長50センチものマグロがかかった。ばたばた体を震わせながら船内であばれている。

 本当はもっとここで魚がかかるはずなのだが、風が弱り、鳥もサメも姿を消してしまい、この日の漁は終わった。

 この漁場は沖合ほど大きな魚が取れる。その一番の場所に行くことができるのはカヌーだけだ。島に何台もある船外機付きの船は、岸よりの場所にしか入ることができない決まりになっている。

 「風が大切で、夜明け前に漁場につかなくてはならない。鳥を見つけてすぐそこにいってルアーを流す。風が漁の決め手なんだ。また行こうぜ」。サイモンがいった。

(報告/大前純一)

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