タカコのびっくりレポート

タカコが日本を離れてから、日々のできごとや見たこと聞いたことを、みんなにレポートします。お楽しみに!


びっくりレポート018号

10月12日(日曜日)

カヌーは、透き通った海の上を走る。海は深さ数十メートルの場所でも底がはっきり見える。水の色は、淡い青から濃いインクのような紺色にまで変化する。光がすじとなってどこまでも深く続いているのが見える=10月6日午前11時ごろ、ウォレアイ環礁外側の太平洋上で

 先日のカヌーでの魚取りに続いて、二度目の魚取りを見てきましたので、その模様を報告します。

 今回も出漁は夜明け前でした。「ドンドン」と、泊めてもらっていた小屋の出入り口のドアがたたかれます。午前二時四十五分です。背をかがめてその小さな出入り口からそとに出ると、今日は快晴。空いっぱいに星が出ています。

 午前三時にカヌー小屋にゆくと、今日の船長役のカシミールがいました。いつもカヌー小屋で寝ている若者のリーダーです。

 だんだんと人が集まってきて、三時半にみんなでカヌーを海に押し出しました。数十メートルほど沖にこぎ出すと、浜辺のヤシ林の中では風がほとんどなかったのですが、島の方から東よりの風が吹いてきます。

 帆を上げて、船はゆっくりと西北の方に進み始めます。
 空には、雲一つなく、空全体に星がいっぱい輝いています。

 何と真上にあるのがオリオン座です。日本では冬に南の空にみえるオリオン座ですが、緯度が南にあるウォレアイでは、ほとんど頭の上に輝いています。

 北の方には、カシオペア座がほとんど逆さまになって水平線近くにおっこちそうになっています。そこからたどると北極星が島影のちょっと上に見えます。そばには北斗七星のひしゃくの水をくむ器の先だけが、海から頭を出しています。

 ウォレアイは北緯7度です。
 カヌーの航海術は、何世代にも渡って口伝えで受け継がれてきました。
 どの島に行くときには、どこまでどの星の方向に進んで、別の星がある角度に見えるようになったら針路を別の方向に合わせる。その知識は多くは歌になって伝えられているのだそうです。

 このこぼれおちんばかりの星空を見ていると、ミクロネシアの人々が星を手掛かりに航海術をあみだしていったのも当然のように思えます。

 今日は風向きが良いので、環礁の北西部にある漁場までは2時間余り、午前6時すぎには到着しました。日の出時間前には漁はできないので、さらに沖合に進みます。

 今日の乗組員はみんな若者で私を除いて6人。前回と同じようにみんなは鳥の群れを一生懸命に探しています。

 鳥の群れがいました。帆の角度を調節して、群れに向かいます。一人が帆をあやつり、一人が舵を持ちます。残り4人が一斉にさおを出します。最後尾に座ったカシミールが、水面まで手を伸ばして、糸の先についたルアーに向けて水しぶきをかけます。

 海面の下には、金色に輝くサメがまたやってきました。
 バシャバシャっという音と共に、カシミールのさおがしなり、大きなマグロが船に飛び込んできました。左側にいた若者の糸にも魚がかかりました。カシミールはマグロをあっという間に船の中に放して、また糸を海に流します。すかさずバシャバシャっと魚がかかりました。が、こんどは途中で魚が海におちてしまいました。

 魚は5キロ以上もあるので、引き上げるときに用心してあげないと針が外れてしまうのです。

 と、急に静かになってしまいました。鳥の群れはカヌーの後ろの方に動いていきます。鳥が追いかけている小魚の群れが、別の方向に逃げたのです。小魚を追いかけているマグロも、そっちに行ってしまいました。

 カヌーも大急ぎで方向転換です。これまで船尾だった場所に帆げたを移します。そうするとこれまでとは逆方向に進み始めるのです。

 鳥の群れをさらに追いかけ、鳥が近くなったらまたさおを入れます。

 鳥はどんどんと移動します。カヌーは鳥を追いかけ、さおを入れ、魚をとり、一瞬の後にまた別方向に鳥を追いかけます。まさに海のハンティングです。風が強くカヌーが素早く別の場所に移れる条件がないと、魚を取るチャンスは減ってしまいます。

 この日は、5回ほど鳥の群れに追い付くことができ、魚は11匹釣り上げることができました。カツオが2匹はいり、残りはマグロでした。

 男たちの腕は、ビール瓶二本分ほどの太さです。魚を釣り上げ、カヌーを操作するためには強い体が必要です。

 日本で便利さに囲まれて生活している人間とは比べられない力強さを感じました。

 報告/大前純一

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