ワールドスクールネットワーク2003年度
夏の研修会

 
阿部治さんの講演内容(その1)

司会:ワールドスクールネットワークは、環境に関心の高い市民など、多くのボランティアに支えられて活動しています。環境に関わる活動をしている団体ですので、司会の私の服装が半ズボンなのをお許しいただければと思います。
 去年から、夏の研修で塩沢に来させていただいています。地元の方たちにお世話になりながら、また地元の名産をいただきながら、今日から4日間セミナーハウスで研修を行ないます。
 今回、縁がありまして、塩沢町出身の阿部さんに講演をしていただくことになり、みなさんにも聞いていただきたく、このような公開講座として開催することとなりました。最初に塩沢町教育委員会社会教育課長、塩沢町公民館長阿部弘文さんにご挨拶をいただきます。

館長:みなさん大変暑い中、大勢集まっていただきありがとうございました。今日は環境の話ということで暑さに逆らわないようにネクタイなしでやってきました。
 阿部さんと高野孝子さんは環境関係で世界で活動するなかで、お互いに塩沢町出身だということで知り合われました。阿部さんは樺野沢のみはらし館のご出身です。非常に忙しくて、塩沢のことを頭の片隅で考えているけれども、なかなか帰ってこられない、というのが現状のようです。高野孝子さんはご存知のとおり、北極で活躍されて、地球の環境を世界中の子どもたちに伝えました。阿部さんは現在、立教大学の教授として環境問題に取り組んでいます。今日はすばらしいお話がきけるのではと期待しています。

司会:ありがとうございました。それでは、立教大学の阿部先生にお話していただきます。よろしくお願いします。

阿部:こんにちは。今日はお忙しいなか多数の方にお集りいただきありがとうございます。さきほど館長からご紹介があったように、日頃から高野孝子さんと、地元に帰って少しでも役に立つことをしたいなと思っているのですが、なかなか時間がとれずにいました。今日も高野さんとご一緒したいと思っていたのですが、彼女は現在NHKの「未来への航海」で船に乗っておられます。今日はこういう機会を作ってくださったワールドスクールネットワークの方々、公民館、地元の方々に感謝したいと思います。  

 今日は1時間半、環境教育と地域開発というテーマで話をということですが、地元で話すのは少し恥ずかしいというか、あがってしまって話が通じるか心配ですが、ざっくばらんに話をしたいなと思っています。話す中身のレジュメを配付しています。

 私は日本全国、そしてアジアのいろいろな国で環境や地域づくりをどうするかという調査やアドバイスに行っています。明後日からはインドネシアに行きます。そんな中で塩沢を見ると、生まれ育った樺野沢では、私が小学校5年の時にスキー場ができ、それまで出稼ぎに出ていた村の人たちが地元で働けるようになって、村も豊かになっていっきました。その反面、山の木がどんどん切られて、小さい頃いた生き物がどんどん減って行きました。私はスキー場ができたお陰で大学まで行かせてもらったのですが、開発と環境の矛盾をずっと感じてきました。ここ数年、雪が減り、スキー客も減って来ました。塩沢の織物も衰退していき、町に帰って来るたびに元気がなくなっていくと感じました。なんとか塩沢の人たちに元気になってもらいたいと、外からいつも思っていました。日本全国でそういう場所は多いのですが、みんなで元気になろうと街づくりをしているところもたくさんあります。そういう取り組みをみなさんに知ってもらいたいというのが、今日の講演の動機のひとつです。私たちの子や孫の世代がどのような時代になるのだろうかということを考えながら、どういうふうにしたら、今の村や街が、また自分が生きていて嬉しいと思える地域が作れるのだろうかということをみなさんと考えたいと思います。  

 今私たちが暮らしている社会には地元から地球全体までいろいろな問題があります。たとえば地元の問題では高齢化、福祉、核家族化、塩沢の問題でいうなら合併問題、子どもの教育や将来などいろいろあります。地球全体では、環境や開発、人口、食料、資源、エネルギー、水、貧困、人権、ジェンダー(社会的性差)、平和、民主主義、最近いわれるグローバリゼーションの問題があります。

 環境の問題でいうと、先週青森、先々週は沖縄に行って来たのですが、沖縄は今年は雨が全然降らず異常だと言っていました。一方、青森では梅雨がまだ明けず冷夏だと言っていた。本当に地球全体が異常気象、気候変動、温暖化です。この問題はこのままいったら解決できないのではないかと言われています。

 食料と人口の問題では、今地球上に人口は63億人なのですが、毎年約9000万人増えています。2050年には90億人になるだろうと言われています。人口は増えるが食料は増えていくのだろうか。食料は増える見通しはほとんどなく減っていくのではないだろうか。人口が増えれば働く場所が必要ですし、どんどん砂漠化していくなど、農業機械と化学肥料、農薬を使った農業が世界でどんどんだめになっています。温暖化で食料の生産がおかしくなっている。 

 水の問題もそうですね。今年の3月に世界水フォーラムが京都と滋賀でありました。今、世界の約1/5、12億人の人たちが安全な水が飲めません。日本では1983年にミネラルウォーターが始めて売り出されてから消費がどんどん伸びています。世界でも買わないと安全な水が飲めないという状況になっています。水を売り買いする商売が世界中ではやっています。多くはアメリカの会社です。今までは石油と食料を押させている国が強かった。今は、石油も食料も水もアメリカが押さえている。水も食料の生産、貧困の問題に大きな影響を与えます。  

 一昨年、ニューヨークでテロがありましたね。多くの方がなくなりましたが、なぜニューヨークでテロがあったのでしょうか。テロの後で、「世界がもし100人の村だったら」という本が出ました。今の世界の状況を、世界の63億人を100人として考えるわかりやすい本です。例えば、世界の100人のうち6人が、世界のお金の59%を占めていると書いてあります。そのほとんどがアメリカ人です。よく言われるのは、世界の2割の人たちが8割の富を占めていることです。金持ちと貧乏な人の格差は年々広がっています。金持ちはどんどん金持ちに、貧乏はどんどん貧乏になっていく。貧乏な人たちが貧困ゆえに子どもをたくさん生んで、働いてもらおうとする。医者にもかかれないからたくさん産まないと育たない。だから世界の人口が増えて行くのは貧乏な人たちが増えいくのです。この人たちは自分の生まれ育ったところでは生きて行けないので、命を賭けて国境を越えていきます。メキシコからアメリカに毎晩のように越えています。日本にも来ていますよね。これは当然です。そこで生きて行けなければ命を賭けて国境を越える。そんななかアメリカが一番豊かな国なのではないのだろうか、例えばグローバリゼーションというアメリカの経済を世界に押し付けようとしてきている。中東ではアメリカやイスラエルがパレスチナの人たちを抑圧している。アメリカだけが世界で一人勝ちしていることに対して反発があり、それが積もり積もって、一昨年のテロが起きたのではないかと言われています。

 このように貧困の問題、平和、グローバリゼーションの問題は密接につながっています。例えば環境が悪化すれば、環境難民という人が生まれます。今まで住んでいるところでは生きて行けないから難民になってしまう。また平和が脅かされても難民が生まれます。以前はこういう問題はばらばらだったけれど、いまはつながっています。環境、平和、貧困、人権、女性の問題もそうですね。いま、世界に63億人いるといいましたが、字の読めない人がたくさんいます。世界の1/5、約12億人が字が読めません。11億人の大人たちと1億数千万人の学校に行けない子どもたちです。大人の多くが女の人なんですね。女の人は学校に行かず働いて男の子を産むことを求められます。学校に行けず、字が読めず、職業的にも自立できず、知識を得ることがでいない。そのために貧しくて社会参加ができず、自分の健康を顧みずに子どもを産まなくてはならないという地域が世界にいっぱいあります。

|阿部さんの公開講座の全文 その1、その2その3その4その5

|印刷用別画面表示 その1、その2その3その4その5

夏の研修会トップに戻る

Copyright World School Network & ECO-CLUB, 1998-2003. No reproduction or republication without written permission.
この画面に掲載された記事・写真・イラスト等の無断転載を禁じます。すべての著作権はワールドスクールネットワークとエコクラブ、ならびにそれぞれの著作物の作成者に帰属します。

Send feedback to info@wschool.net
ご意見、お問い合わせはinfo@wschool.netまで