ワールドスクールネットワーク2003年度
夏の研修会

 
阿部治さんの講演内容(その3)

 いま話した3つの公正と3つの持続性を考えなくてはいけないということですね。自分自身がより自分らしく生きていける社会、人と人、地域、自然が存続できる社会を作って行くのが持続可能な開発という言葉で言われています。世界中の国や国際機関が具体化のために活動しています。11年前にブラジルで地球サミットがあり、持続可能な開発を世界中で具体化する計画を作りました。それが実施されているか検証しようという会議が昨年南アフリカでありました。この10年間で世界の持続可能な開発や、持続可能な社会の活動が進んできているかというと、どんどん悪くなっているのが今の状況です。なんとか持続可能な自分、社会、自然を具体化していく、このことが私たちに課せられた一番大きな課題で、今日のテーマでもある環境教育と地域開発ということです。  

 環境教育は学校でやることが多いですが、例えば公民館や商工会、あるいは企業でも取り組んでいます。多くの企業が環境報告書を作り、持続可能な社会に対する貢献を訴えています。冒頭に地域や世界の問題を紹介しましたが、今、世界がどんどん狭くなっています。私たちの食べているものが世界中から来ます。また、インターネットによって情報が世界中に回ります。その一方で、自分たちの食べ物がどこから来ているのかわからないなど、世界が狭くなっているにも関わらず、つながりが切れています。以前は自分の目の届く範囲で食べ物をとったり食べたり、人と付き合ったりと関係が密接でした。自分がこうすればあの人はこうなると原因と結果が見えたんです。今は原因と結果が見えず、どんどん遠くなっている。その結果、先ほどから話しているいろいろな問題が出て来たのではないか。つまり、人と人との関係、人と自然との関係が切られて行く、それが今の社会なんだと。なんとかこの関係をもう一度つないでいこうではないか。今の関係では未来はない。なんとか未来があるつながり方を回復していく。つないでいく、それが環境教育です。そのために学校ではいろいろなことを勉強しています。

 学校で総合学習が去年から全国の学校で始まり、来年からは高校でも始まります。総合学習とはすごい時間ですね。年間100時間以上あります。子どもがいろいろな授業でやっている勉強を、総合学習の時間を通して、社会でどんな意味があるのだろうか、地域とどんな関係があるのだろうかということをつないでいく場所ですね。総合学習では、環境、福祉、人権、国際理解などがテーマになります。こういったテーマは先ほどの3つの公平、持続性につながっています。どのテーマでも持続可能な自分自身や地域を作っていくための活動なんですね。ですから総合学習は広い意味での持続可能な社会を作って行くための教育と言えます。そして今、全国で総合学習を契機に、学校と地域が一体化した取り組みがあちこちで始まっています。

 福島県に川俣町という町があります。ここも養蚕と織物の町で、衰退して経済的に落ち込んでいたのですが、総合学習が始まって、地域の自治会、婦人会などあらゆる人たちが学校に関わり、地域で学校を支えていこうじゃないか、ここに住んでいたことを誇れるような子どもたちにしようじゃないか、と大人たちがいろいろな授業をやったり、学校に養蚕の小屋を作ったり、裏山でキノコを栽培するなどしています。活動を通して自分たちの地域がこんなにいい地域なんだと、子どもと大人が一緒になって発見しています。

 健康や環境など地域があらゆることをやる時に、学校が街づくりの拠点になろうという動きも始まっています。栃窪では新しい学校を作ろうとしていますが、子どもが10数人のところに多額の予算をかけて作るのがいいのかという議論もあると思います。学校を子どもだけではなく、地域の大人も集まる場所にしようという運動があちこちで始まっています。千葉県の習志野市に秋津小学校という学校があります。そこでは学校に地域の人たちが四六時中学校に来ていろいろな活動をしています。子どもたちが授業をしている横でお母さんたちが歌の練習をしたり、普通に学校の中で大人と子どもがふれあえる。新潟の豊栄市では市全体で環境教育を熱心にやっていて、24時間地域に開かれた学校を作ろうとしています。栃窪の小学校を作って行くうえで参考になるかもしれませんね。  

 学校が子どもたちの学びの場であると同時にコミュニティーの中心になっていく。そこで子どもと大人の新しい関係が見えてくる。総合学習は持続可能な社会作りの場のひとつとして始まっているということです。しかし、去年から始まったにも関わらず、日本の子どもたちの学力低下の原因ではないかと総合学習を敬遠する風潮もあります。体験型、地域との連携型の学習をするのは実際むずかしいく、頭が切り替えられない先生もいます。でも、自分の子どもがいるいないに関わらず地域の大人たちが学校を支える仕組みを作ったら勝ちなんですね。教師はそのための案内人にすぎません。

 今のままの関係では持続しない、ではどんな関係がいいのだろうか、想像する。想像する力は豊かな感性です。いなかの人こそ豊かな感性があるはずです。毎日いろいろな自然の動きを見て、人とも関わって行くなかで感性が育っていく。これがベースです。この感性をどうやって身につけていくかが非常に大事な課題です。この豊かな感性を基にしてに新しい関係を想像する。新しい関係やつながりを具体化していく。ふたつめの創造です。そのためにはいろいろな知識、情報、技術が必要です。

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