ワールドスクールネットワーク2003年度
夏の研修会

 
阿部治さんの講演内容(その4)

 昨年の南アフリカのサミットで私たち日本のNGOが提案した活動が世界のひとつの運動になりました。持続可能な社会を作って行くためには学校にしろ、地域にしろ教育が一番大事です。私たちは、国連として実施してほしいと提案しました。それが2005年から「持続可能な開発のための教育の10年」ということで世界で始まります。日本の民間団体が提唱し、日本政府が昨年末の国連で提案した日本発信の国際的な運動なんですね。日本政府は世界中でこの運動を進めていくために莫大なお金を出そうと言っています。小泉さんは南アフリカで演説したのですが、2005年からの5年間、年間500億円ずつ、合計で2500億円を途上国での持続可能な教育のために援助すると約束しました。これは非常に大事なことですが、途上国だけではなく日本の中で持続する教育をしていかなくてはならないと私たちは言っています。

 つい先だって、文部科学省が国際的な提案を作りました。そこには日本が実践している総合学習が、まさに持続可能な開発のための教育だということを明記しました。つまり日本は、国連に対して、すでに日本は持続可能な教育をやっていると宣言したということです。また、世界が持続するためには日本の教育を変えないとだめなんだ、ということも。例えば途上国の貧困問題も大事ですが、日本の貧困問題もある。お金はあるが精神的に貧しい先進国の問題を考えなければならないですね。例えば東京と塩沢の問題も考えなければならない。そのためにどんな地域づくりが必要なのかというのが地域開発の課題です。

 バブル時代には大型リゾートがあちこちで作られ、ほとんどが破たんしました。今は小さな開発を全国で進めていこうという流れになっています。例えば塩沢でもやっているグリーンツーリズムという活動もそうですね。いまは不況と言われていますが、サラリーマンがちゃんと休みをとったらかなりの景気浮揚になると言われています。自然学校やグリーンツーリズムがあちこちで行なわれています。お客さんを野山に連れて行って自然に触れることを組織的にやる、団体として受け入れる仕組みを持つのが自然学校です。大きなところではスタッフが30人規模のところもできています。私たちは自然学校を日本全国で広めていこう、環境教育をしていくためには豊かな自然体験が必要で、それを通じて人と人との体験もしていこうという運動を1980年代から始めてきました。87年に山梨県の清里で集まったときには自然学校をやっている人たちは10数人しかいませんでした。いまでは全国で2000校くらいの組織ができてきました。企業でもホンダ自動車が栃木県に、トヨタ自動車は岐阜の白川に自然体験の場所を作っています。また国立や都道府県の青年の家なども自然体験の場にしようという動きになっています。私の知り合いが富士山のふもとで自然学校をやっていますが、そこには毎年数万人の子どもたちが修学旅行の一環として行きます。青木ヶ原の樹海を散歩するなどいろいろなプログラムをやっています。

 自然とのふれあいはこれからどんどん需要が増えていくでしょう。これを進めていくためにさまざまな法律が作られています。つい先日も国会で新しく「環境の保全のための意欲の増進および環境教育の推進に関する法律」が作られました。さきほど言ったような活動や地域、学校の活動を支援していく法律です。塩沢のように田んぼがいっぱいあるところでは1999年に食料農業農村基本法という法律が作られました。これは中山間地域、まさに塩沢の山の田んぼなのですが、中山間地域を活用しようというものです。田んぼの学校といって、田んぼや用水路を環境教育の場にしていこうという活動を、4年ほど前から農水省の外郭団体がやっていて私も関わっていますが、今年から農水省はそういった活動に年間8億円を援助しようと始めています。

 地域の環境や文化、健康、教育、福祉などいろいろなことを地域の人たちが楽しみながら、次の世代に伝えていこうという街づくりが全国で始まっています。例えば山形県の朝日町、岩手県の東和町では、まず地域の人たちが地域のさまざまな資源を楽しもう、その資源の一部を観光客にも分けてあげて、お金をもらおうという活動を始めています。また、再来週に熊本県の水俣に行くのですが、水俣は本当に大変な思いをしました。10年前まで地域、経済はどんぞこだった。これではいけないと、チッソ、行政、地域、患者団体が一緒になって話し合いをしました。新しい水俣を作ろうと、ほつれて切れていた関係を新たに作る「もやい直し」運動をしました。そこでは水俣全体で子どもから大人まで自分たちの地域を見つめる地元学を始めました。子どもたちはカメラを持って地域のいいことろも悪いところも写真にとり、大人も一緒になって模造紙に地図を作りました。それを水俣市の将来計画を作る時に参考にしていきました。今ではグリーンツーリズムは水俣市の中心的な産業です。水俣のあらゆる人たち、農家、お店の人たちが案内人になり、いいところも不の遺産もすべて含めて、水俣をグリーンツーリズムのメッカにしようとしています。学校も市役所も環境にいい活動をしようと環境ISOを取っています。今は水俣は世界でも有数の街になりました。  

 他にも全国各地でこういう街が生まれています。塩沢でもできるのではないでしょうか。そのためには自分たちの地域にどんないいところがあるのだろうか、どんな悪いところがあるのだろうか、地域の人たちが自分の目で見なければならない。私には自分の思い出の宝の場所がたくさんあり、帰って来た時に行ってみます。でも地元の人は日常的に接しているため意識できないかもしれない。そういう意味では外に出て行った人たちが帰って来た時に一緒に歩くのもいいかもしれない。いずれにしても、子どもから大人までが自分たちの地域の宝を見つける、確認する作業が必要なのだと思います。これを別の言葉で「探検・発見・ほっとけん」というのがあります。これは滋賀県の小学校のスローガンのようなものです。3年生が地元の人たちと一緒になって琵琶湖に注ぐ用水路の調査を始めました。探検すると、生き物やゴミを発見します。発見し人に伝えるのくり返していく。それが全校に、外に広がっています。

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