ワールドスクールネットワーク2003年度
夏の研修会

 
阿部治さんの講演内容(その5)

 最後に、具体化に必要なこととして「ビジョンを描く、真実を知る、学ぶ、ネットワークをつくる、愛する」という5つを上げました。これは、「限界を越えて」というアメリカの本からとったものです。1972年に「成長の限界」という本が出されました。このままでは人口が増えていき、ある時点でぱたっと減るということをコンピュータで予測し、「成長の原限界」を書いて世界中で読まれました。著者が、20年後により正確に計算したら同じ結果がでた。このままでは人類は破局する、というのを書いたのが「限界を越えて」という本です。

 破局を迎えないための方法がここに上げた5つのことです。まず、自分そして社会、自然が破局を迎えないためにはどうしたらいいか。新しい関係を作ろう、というビジョン、展望を持つことが大事だということです。塩沢町の人たちも一人ひとりが違うビジョンを持っているでしょう。それをみんなで考えようということです。100人いたら100人のビジョンがある。それをお互い出して交流していけば、塩沢町全体のビジョンが見えてくるのではないか。それを作るためには、いま世界が、町が、自然がどうなっているのかを知らなければならない。学ばなければならない。そして、一人ではできないからみんなで協力する、ネットワークを作るということですね。そして大事なのは自分たちの住んでいる場所や人を愛することだと彼らは言っています。

 自分たちの地域に愛着を持つにはどうしたらいいか、新しいつながりを作っていく、その時に大人だけでは未来は開けません。子どもたちから元気をもらうということです。子どもたちは未来に希望を持っています。大人にとって子どもの存在自体が希望です。子どもから元気をもらい、大人たちが元気になることによって子どもたちも元気になります。子どもたちが地域に出る、社会に出る力を大人たちが励ましていくことが、持続可能な社会を作っていく一番大きな原動力になると思っています。

司会:話の内容についてでも、塩沢の町のことでも結構です。質問のある方は手を上げてください。

公民館長:現在の塩沢町を子どもの頃の目線で見て、こんなことをしたらどうかという提案があれば聞かせてください。

阿部:樺野沢に帰ると裏山とお地蔵さんに行くのですが、自分にとって大事な場所を今の子どもたちは持てているのかが気になります。持っていれば塩沢のことをずっと気にかけていくだろうと思いますね。私は村の人たちがお地蔵さんの世話をしていることに感謝し、村の人との出会いを楽しみにしています。地元の人たちの出会いの場が地域で作られているのだろうかが、気になりますね。今の状況に応じた地域の単位、集落の単位の出会いの場をどう作って行くかが大事ですね。

質問:同級生の山田が質問をさせていただきます。住んでいたところも同じ樺野沢です。私たちはグループで都会の方を相手にグリーンツーリズムをやっています。食料問題と関わることかもしれませんが、私たちが子どもの時は整備される前の川がありましたが、今はほとんどなくなってしまいました。そういうところに住んでいたタナゴやメダカ、カラス貝が見当たらなくなってしまいました。耕地整理しなければいけない、河川改修をしなければならないというのはわかるのですが、昔いた生物を大事にした河川改修の方法をやっている実例があったら教えていただきたい。地元の子どもたちに残してあげたいという気持ちもあります。

阿部:子どものころ網を持って川に行けばいろいろな生き物がとれました。今は見るも無惨な状態ですね。一方で農水省の農水振興局が、農業、田んぼによって里山の生き物が生きられるという農業の多面的機能に気づき始めました。そして今、里山の田んぼの生き物調査を農水省、環境省が一緒になって取り組み、あちこちで生き物を復活させようとしています。農村環境整備センターという土地改良専門の外郭団体が把握してやっていますので、聞いてもらえれば事例を教えてもらえると思います。ぜひやってもらえればと思います。農水省の田んぼの学校の助成事業も申請できます。土地改良区としても生き物が住めるようにするのは至上命令です。ぜひ広めてほしいです。

質問:スローフード運動に前から興味を持っていました。新潟県の場合は新潟市を中心にメーカーとおみやげ屋さんが中心になり、販売の付加価値のような動きになっていて、ちょっと困ったなあと感じています。スローフードというのはどこからとれたかはっきりした食べ物を伝統的な技術で作って食べようという、環境や安全、地域文化にいい運動なので、PRを始めているところです。新潟県でのスローフードの広げ方について聞かせてください。

阿部:スローフードはイタリアからという話もありますが、日本の食そのものがスローフードだったと思います。経済成長や女性の社会進出で加工食品、ファミリーレストランの消費がどんどん増え、ファストフードが健康面に非常に大きな悪影響を与えているというのが出てきました。その見直しのなかでスローフードという言葉が出て来ました。これはまさに宣伝です。スローフードという言葉を普及していこうという人たちもいます。今晩ワールドスクールの夕食で地元のゼンマイを食べようとしています。ゼンマイは時間をかけて加工して手をかけた地元の食、まさにスローフードです。地産地消、地域で作ったものを地域で消費しようということです。今スローフードといろいろなところで言われていますが、その場合は食べ物にしか目がいっていないんです。食べ物を生み出している地元の土地との関わりが軽視されているんですね。両方を一体化して見なければいけない。私たちがスローフードを選ぶことが地域の存続につながっているのです。魚沼の食を食べて行く。手をかけたプロセスが消費者に見えることが大事です。消費者と生産者の関係が密になり、地域が見えて来る。トータルとして見えて行くことが地域の特徴ではないかと思います。

司会:時間がきてしまいましたので、これで阿部先生の話を終わらさせていただきます。阿部先生どうもありがとうございました。

拍手

司会:それでは今日こちらに来て頂きましたみなさん、そして阿部先生へのお礼の挨拶を含めましてWSN運営委員の大前よりご挨拶させていただきます。

大前:阿部さん、ありがとうございました。みなさん、今日はお忙しい中ありがとうございました。私がなぜこういう催しを塩沢でやったかのひとつのきっかけですが、広報しおざわに、お誕生おめでとう3人、お悔やみ16人とありました。これはなかなか大変ですよね。さきほど阿部さんが言っていた持続可能性ということで言うと、こうやって人口が減って行くのはとてもいやな感じがします。特に私は新聞社に勤めていましたので、何百万部売れるか人口はとても気になります。読む人が減れば新聞はいりません。持続可能という言葉は難しいですが、チラシに書きましたように「世界の仲間と地域の仲間がともに末長く生きて行くためになにが必要か」ということです。いかに長続きするかです。商売や農業、観光もそうです。どうすれば長続きするのかをみなさん考えています。今日ワールドスクールネットワークの研修会に沖縄やインド、シンガポールからも参加しています。外からきた私たちと地域の人たちがつなぎあってものごとを作りはじめると新しい芽がでるのではないでしょうか。今日の阿部さんの話を聞いて非常に勇気付けられたのは、お客さんとして地域と関わりあうのではなく、パーツパーツとしてつながりあえば、生きていける道が作れるのでは、ということです。

 こういうことが出来るのもみなさんのご協力のお陰ですし、公民館の方にも受け入れていただいたことをありがたく思っています。半分よそもの、半分身内のような人間がこれからも増えて行くと思いますが、おつきあいいただいて教えていただいて、こういう機会を作っていただければと思います。本当にお忙しいなかお時間を作っていただきありがとうございました。

司会:最後に受付にアンケートがありますので一言書いていただければと思います。また、未来への航海の冊子が受付にありましたが、高野孝子さんが沖縄から船に乗ってアジアの中学生たちと環境について学びを提供しながら航海をします。お昼の番組に登場することになりますので、ぜひご覧になってください。

|阿部さんの公開講座の全文 その1その2その3その4その5|

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