特定非営利活動法人ECOPLUS
ワールドスクールネットワーク
2003年度国際研修フォーラム


ロビーニコルさんの講演内容(その2)

 なぜ体験型学習が大切なのかという点に移りましょう。
 この相互関連の中で人間の位置はどこかということです。人類は進化しました。そして、脳も優れたものになったでしょう。そして、科学と技術の発展のために生活の水準というのは高くなりました。世界のある地域では特にそうだといえると思います。しかし、1つの事実が残ります。人間はいまだ自然に頼って生きているということです。  

 栄養とか空気。健康のためにはきれいな水も必要です。自然はまた、人間の出す廃棄物、工場と家庭からのものを受け取ってくれます。そして、生命維持系を働かせます。気候の安定ですとか光合成とかあるいは、紫外線から守ってくれるのも自然です。科学技術の進展はありましたが人間は、個人としても、あるいは地域社会としてもそれを維持してくれる自然のプロセスに頼っていることに変りがありません。

 では、体験型の学びはどうして重要なのでしょうか。今回の会議は、日本や各国でどのように体験型の学習プログラムを作り上げていくかということです。だからこそなぜ体験型の学びが大事なのかを考えなければなりません。その価値と、同時に限界についても議論したいと思います。

 人間は誰でも物事を見て、認識し、わかる能力があるのです。視覚、触覚、聴覚、臭覚、味覚で感じ取ります。これらを原料として世界を感じるわけです。自然のどっぷりと浸ることを通して最も深くその場所とのつながりを感じるのです。言葉を変えれば、この浸る感覚がないからその場所の一部とも感じないということが、昨今いえるのではないでしょうか。ですから、浸る感覚がないということは、これは何を知らないのかさえ知らないという問題を引き起こします。

 そして、ならばどうして知らないものを見つけることができるのでしょうか。これこそ野外に連れ出して感覚を解き放すことが大切になる理由です。感覚を解き放せばその場とのつながりを体験させられるものです。もう少し具体的に話しましょう。

 私はある日、山でテントを張って一日の終わりの黄昏を楽しんでいたことがあります。急にそこに100羽以上のアマツバメが私の頭上を飛んでいきました。本当に魔法が起ったようでした。こんな多くののアマツバメを一時に見たのは初めてで、一つの方向だけに彼らが飛んでいくというのを見たこともありませんでした。本当に感動したのは音です。私の頭の上1メートルか2メートルを飛んでいきました。凧の出す音に似ていました。ツバメたちが空中で回転したり曲がったりする時に起こす音でした。小さな鳥が大きな音を出すのが驚きでした。私は何の目的があるのかと考えました。同時に彼らの飛行能力のすごさというのにも感銘を受けました。まだ、自分でもあの経験が説明できないでいます。そして、どうしていまだ、これだけの経験がそのときも今も魔法のように思えるのかまだわかりません。

 この体験を合理的に説明できないことはないですが、完全には無理でしょう。1つ1つの説明を寄せ集めたところで体験全体は説明し切れないからです。説明できないから私の弱点だということはないと思います。教育的な見地から考えますと、説明できないからもっと学びたいという、刺激を得るものです。私自身、この体験からアマツバメの学習を始めまして、そしてたとえば、アマツバメ、ツバメ、イワツバメ、ショウドウツバメとかこういう違いがわかるようになりました。そして、私の家から今、初めてのヤドリギツグミの違いがわかるようになりました。2月に鳴くのだということがわかりました。3月になりますとタゲリとかミヤコドリとかユリカモメなどが川にそって、海岸の越冬地から夏を過す内陸へと渡るのが分かるようになりました。学んだのです。

 4月には渡りのミサゴがアフリカから渡ってきて、家のまわりのアカマツに巣をかけることを知っています。学びがいまも続いているのです。  

 ここで、私の体験を理論に結びつけてみようと思います。私は学者の難しい言葉を使わないな、と感じた人がいるかもしれません。今からこれからいっぱい使うことにします。

 このスライドにあるのは、私が知識に関してよく使ういくつかの言葉です。知識というのはあるひとつのものに限らないということです。高野さんと事前に話したときに、このような言葉は英語から日本語へ訳しにくいということがわかりました。しかし、言葉そのものではなく、考え方を分かってもらえると思います。(スライドへ)

 さて、私のアマツバメの話ですが、あれは体験的、あるいは感覚的な知識です。新しい経験を土台として1つの経験が使われたからです。ある体験はそれっきりではありません。次々に学習的な体験を生み出す土台となってそしてついには理論と実践を結びつけていくといえるからです。

 6年たちまして今も私はアマツバメがいないかどうかと気にかけています。あのときの体験がきっかけで一生関心が湧いたのです。誰もが私と同じような魔法にかかるということはないと思います。しかし、同じような経験を皆さんもお持ちでしょう。アマツバメの直接的な経験が私にインスピレーションを与えてそして、もっと知りたいという気にしてくれた実例を示したのです。私は環境の一部をただ観察するだけで学ぶことができました。

 この体験を出発点に、この知識をほかの人と共有することを通じて、観察から学んだことをさらに高めることが可能です。そのためには私が観察から学んだことを整理してほかの人が分かりやすいようにしなければなりません。共有を通じて自らの学習を再確認し、他の人たちが何を知っているかを学ぶことができます。より自らの理解を積み上げるわけです。これが表象的知識です。体験的な知識を表現することが表象的知識であるのです。

 しかしながら、この場合、体験的知識だけでも表象的知識だけでも不十分です。例えば、アフリカとヨーロッパ間のアマツバメの渡りを理解したいのであればただ、私は彼らを体験的に追っていくことはできません。一緒に飛ぶことは無理です。

 ただ、表象的な知識を拡大して、他の人に幅広く聞くことはできます。あるいは、本を読む、インターネットで調べるということができます。これが私が呼ぶところの次の命題的知識、学びと呼ばれるものです。命題的学びというのも大切です。といいますのも、全体的に概念的に考えるからです。例えば、アマツバメの個体数が減っていることや、その理由がわからないことについては、特に命題的な学習が必要です。個体数について理解してくれば、その生態系がわからないといけません。例えば、何を食べるのか、あるいは餌をやるパターンとか、あるいは生息地、気候の条件などです。この種の知識が特に大切なのは人間の活動でアマツバメの数が変化してる場合です。たとえば、殺虫剤を農園に撒いてしまったから虫が減って餌が少なくなったのか。この命題的知識は、その他の文献など二次データの蓄積で得られるものです。

 たとえば、調査報告書とかその他の文献があるでしょう。そのときに経験的なやり方でデータを集めても意味がありません。もうあったデータだからです。もうすでにあるデートを自分で集めでもあまり意味がないでしょう。

 もう1つの重要な点として、野生生物の理解のみならず、この場合はアマツバメでしたね。それと、野生の環境と関わる社会への批判ということも含まれます。たとえば、経済活動はどうなのか、あるいはグローバル化は自然にどういう影響を与えているのか、結果として効果的な知識を増やすやり方は命題的知識であって、体験的知識ではない。効率はこちらの方がいいのです。ということは学習の出発点はいつでも直接的な体験でなくてはならないということはないわけです。知識のある部門では他の人の知識に頼って、そして自分の発展の土台とすることもまったくかまいません。

 たとえば、光合成のことを先ほどお話しいたしました。別に植物は太陽からのエネルギーを取り出すメカニズムを理解を完全に体験しなくてもいいわけです。こういうことは書いてあるでしょう。やって悪いことはないでしょうが、現在ある知識に到達するすべてのを実験をやっていたのでは一生かかってしまいます。ですから、英語でいうところの「車輪を再び発明しなくてもいい」。すなはち、すでにある便利なものなら使いなさいということができます。学者にとって意味は重要であります。最も適切なやり方を見つけたらいいわけです。時には一つの形態の知識の方が他の形態よりも役に立つことがあります。また、学生の学習プログラムを立てる先生にも重要な意味を持ちます。

 4番目、これは行動にいたる学びと呼んでおりますが、たとえばですが、アマツバメの固体数が減っていて、その理由が明らかになれば、行動に移ることが出来ます。そして、行動には幅があります。たとえば、問題の質によりまして、生息地を守るとか、あるいは政治家、あるいは環境局に訴える、陳情活動をしている組織に自分も登録するなどがあります。

 自分の信条に沿った、そしてその場に与えられた知識に沿った行動を起こせるようにするわけです。知識というのは受身で思索的のみならず、活動的な側面を持つということです。

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