知恵だより 111号

Jan. 1 2000

お正月

元日の朝、配達されたばかりの年賀状を読む青木家の人たち=栃木市の青木さん宅で

2000年1月1日 気温:4.5度 天気:晴時々曇 風向き:北西
現在地 : 栃木市=北緯36度22分27秒/東経139度43分51秒
歩いた距離:0km

 旅の途中で会った何人もの日本の年配の人たちが、どんなに苦しい時代にもお正月がどんなに楽しかったかを話していました。僕に日本の文化についていろいろ教えてくれた人たちが感じているお正月は、最高に楽しいものであるように思えます。これまでに聞いた話を思い出しながら、青木さんの家族と一緒に2000年の最初の日を祝いました。

 「私たちが育った時代のお正月と最近のお正月の一番大きな違いは食べ物です。今のような上等な食べ物はありませんでした。でも、正月の料理はとてもおいしかったですよ」と、パジャマの上に茶色のボアのベストをはおって食卓にすわった青木さんのおじいさんが言いました。歩いている間に出会った同じ年配の人たちも、ごちそうと、時には新しい着物もあるお正月のうれしさを繰り返し話していました。

 「昔は週末も休みませんでした。正月だけがくつろいで体を休め、おいしいものを食べられる機会だったのです。もちを食べ、新しい着物を着た時のうれしかったことをいつも思い出しています」と、山形県で会った女の人は言ってました。

幸運や健康を願って、煙を体にかける参拝者たち。背景に見えるのは参拝者たちが鈴を鳴らしお祈りをする本殿=栃木市の大平山神社にて

 生活して行くのがやっとの時代から、年末のボーナスがあり、その使い道が際限なくある時代へと 発展しました。これまで出会った年配の人たちは「今は、毎日が正月ですよ」といいます。おいしい料理や、買い物が、特別なものでなくなったのです。僕は青木家の人たちと朝食の食卓につきました。正月休みを実際に味わえることにワクワクしていました。

 僕の前の小さなさかずきに日本酒が注がれました。おじいさんが「実りある、幸せな年になりますように」といって、みんなで乾杯をしました。青木さんの家では、家族を守っている神様に感謝するために、家の中やガレージ、玄関への通路などに神だながあります。その神だなから日本酒がさげられて来ました。「神様にお供えしたお酒を飲むと、体にいいのです」と、おばあさんが僕にお酒を注いでくれました。

幸運を願っておみくじを竹の枝に結びつけている青木さんの子供=栃木市大平山神社で

 食卓のまんなかにきれいな飾り模様のついたおぼんがあって、その上に置かれた料理の一つひとつに意味が込められていました。みんなが食べている時、青木さんの下の女の子が、年賀状の大きな束を持ってきました。

 神様に感謝し、新年の健康と繁栄を祈るため、近所の神社に初もうでに行きました。青木さん夫婦と二人の女の子と僕は、鳥居をくぐり、一歩一歩、大平山(おおひらやま)神社の入口に向かって進ん行きました。社までの330メートルの上り坂で、青木さんの子供たちが階段の数を数え始めました。上っていくと、年を経た木々の木かげが、汗ばんだ背中をひんやりと冷やしてくれました。階段が急になるにつれて、初もうで客が立ち止まって一息ついています。階段を「ひゃーく、ごじゅーう」と数えながらぴょんぴょんと飛び降りて行く小さな兄弟の後を若い夫婦が追いかけて行きました。

 神様を悪霊から守っている鳥居をくぐると、本殿が見えてきました。階段の端から、人々が幸運と健康を祈って香(こう)をかけている姿が垣間見えました。さい銭箱にお金を投げ入れている人や、鈴を鳴らして静かに祈っている人もいました。

すべてを新しくして新年を始めるために、古いだるまやお札が元日に燃やされます。古い札は焼き捨て、新しい札に買いかえるのです=栃木市大平山神社で

 幸運を祈るおみくじが竹の枝先に結びつけられていました。参拝者は絵馬に願いごとを書き、赤い木の枠に吊るしていました。青木さんの上の女の子は、「希望の高校に合格しますように」と書いて、その枠につるしました。悪運を追い払う破魔矢や幸運をかき集めるという熊手が売られていました。竹と紙の飾りに囲まれた地面に、小さな火が燃やされており、去年のお札などがその上に積まれる度に、はじけた音を発していました。

 神社にもうでて僕たちは、幸せいっぱいの清々しい気分になりました。それからこんどは別のやり方で新しい年の運だめしをするため、地元のデパートに行きました。2日の午前中、最近では元日も、大きな店やショッピングストアーで幸運を射止めることができます。いろいろな品物がいっぱい詰まった福袋が手ごろな値段で売られています。たいてい文房具、子供の衣類、スポーツウエアなどに分類されて売られています。若い女性用品の売り場で青木さんの上の女の子が5000円の福袋を買ったら、中に7種類の衣類が入っているという大当たりでした。

 一つひとつ福袋から品物を取り出している様子を見ていると、アメリカで過ごした昔のクリスマスを想い出しました。福袋を開ける前の期待感はクリスマスの贈り物を開ける前に僕が感じたものと、とてもよく似ているように思いました。

買ったばかりの福袋を持ってスーパーマーケットの前に立つ青木さんの長女=栃木市内で

 時代が変わり、元日のしきたりも常に変わり続けているけれども、青木家の人々は、お正月は祝いの時期であり、喜びと幸せ、そして家族の強い結びつきの源ともなっていることを僕に教えてくれました。お正月は子供にとっても大人にとっても、今なお一年の中でもっとも楽しい時なのです。

 幸せを測ることは難しいけれど、皆さんのおじいさん、おばあさんは、どのくらい幸せだと感じていると思いますか?

 皆さんは、毎日がお正月のようだと思いますか?

 グレッグ

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