知恵だより 116号

Jan. 6 2000

おおたかの森

「おおたかの森」で、倒れた木を切り出す作業をする子どもたち

2000年1月6日 気温:4度 天候:曇り 風向き:北東
現在地:南浦和=北緯35度50分05秒/東経139度39分25秒
歩いた距離:0Km

 「熱帯雨林と同じように、日本の雑木林にはたくさんの生き物がすんでいます」。「おおたかの森トラスト」のパンフレットにこう書いてあります。

 「おおたかの森」という表現からは、とっても田舎の自然にあふれた場所を思い浮かべるかもしれません。しかしこれは、ごみ処理業者が次々に進出して雑木林が姿を消している埼玉県で、5.5ヘクタールの土地を保護しようという試みでした。子ども自然クラブと、南浦和中学校の環境クラブ、それに地元のボランティアら30人近くが森を守る知恵を探しました。

 トラストの保護地域にみんなが集合しました。フェンスで仕切られた隣は、ゴルフ練習場です。背の低い雑木林と畑の上の空を、狭い道路に沿って高圧線が伸びています。

 「環境保護と環境保全とは違います。私たちがやっているのは環境保護です。オオタカだけを守っているのではなくて、森とその生態系全体を守っているのです。自然がないと保全は出来ないからね。そのために私たちは森を買っているのです」。すでに保護地域となった森で保全活動をしている足立さんはいいます。

くぬぎ山地区のある廃棄物処理業者。いろんな廃棄物が置かれています

 「一生懸命にやれば、オオタカを見ることができるかもしれません。オオタカはこの森が一生懸命に守られていることを知っているのです。バードウォッチングが森を守らないこともオオタカは知っています。バードウォッチングをするだけでは、オオタカに出会うことは無理なのです」と足立さんは、みんなを励ますようにいいます。

 森を守る動きは、埼玉県のこの三富新田(さんとめしんでん)と呼ばれる地域で実に300年近く前から行われてきました。江戸時代(1603年から1867年)に、この地域は江戸の人口増大にあわせて開発されました。畑と雑木林と屋敷林がセットになって提供されたのです。森からの葉は畑の肥料になり、木は炭やたきぎとなり、農民たちは自給自足の農業をしてきたのだそうです。

 森の中で、三つのグループに分かれて、倒れた木の処理とまき割り、炭を粉にする作業をしました。どれも手作業です。つい最近まで行われてきた、環境に与える影響が少ない農業のやり方です。

 トラストでは、日本古来の森の手入れの方法を受け継ぐだけではなく、炭を使った土地の改良や、川の浄化、質の良い木炭を作ってその売上でさらに森を買って開発から守るということもしています。

 所沢市のくぬぎ山地区は、この数年、新聞やテレビなどにいっぱい紹介されてきました。産業廃棄物処理業者がいっぱい集まって、その焼却炉から出るダイオキシン汚染でも有名になったのです。

 皮肉なことに、この地域での公害の増加と、何百年もの伝統がある埼玉の環境にやさしい農業とは、関係しているのです。平地にある森の相続税がきわめて高いために、若い世代の地主たちは、土地を売らないわけにはいかないのです。いったん売られたら、企業がやってくるのは時間の問題です。日本の極端な土地不足で、墓地の開発業者や産業廃棄物処理業者が土地を見つけるのは大変難しくなっているのです。

 くぬぎ山地区を歩いてみました。中央部を貫く幅6メートルの道路が出来たばかりです。足立さんは「ここに新しいお墓ができるのです。雑木林を突っ切って、いつのまにか出来てしまったのです」といいます。道の両側にゴミが積まれています。金属板のフェンスのすきまから見ると、その向こう側にいっぱいゴミが山積みされているのが分かります。

 この産業廃棄物処理会社が並ぶ場所を通って、こどもたちは、そのにおいとゴミの多さにびっくりしました。湯気を上げて何かを処理している場所を通りながら、「くさい」と女の子が鼻を押さえました。「こんなにいっぱいゴミがあるなんて」と別の子がいいました。

 雑木林を抜けて、お茶の畑に出ました。歩いてきた森は、農家の人たちに、三百年に渡って肥料を提供してきた場所です。その森が、焼却炉とか産業廃棄物や残飯の処理業者でいっぱいになってきて、代々引き継いできた土地で農業をしている人たちに問題をばらまき始めたのです。農家の何人かの人たちは、足立さんらといっしょに残った自然を守る活動をしています。

 足立さんは「知恵はある。だけど使い方を知らない」といいます。「行動がない。みんなだれかがやってくれると思っている。子どもたちはそれをみている。なので、地球を大事にしない」。

 足立さんやトラストのみんなが作ってきた運動には、これからの日本をもっと行動型にしていくためのかぎがあるように思います。三富新田を守ってくださいという埼玉県の知事にあてた手紙を書こうと子ども自然クラブのメンバーは話していました。彼らからの報告を楽しみにしたいと思います。

 グレッグ

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