知恵だより 124号

Jan. 14 2000

しもつかれ

「しもつかれ」をもらうために並んだ子どもたち=栃木県河内町岡本北小学校 で

2000年1月14日 気温:8度 天気:晴 風向き:西
現在地:岡本北小学校=北緯36度35分06秒/東経139度56分46秒
歩いた距離:0km(岡本北小学校の子どもたちに会うために栃木県に戻りました)

 「知恵めぐり」の旅の前半がいよいよ終わりに近づいてきました。岡本北小学校の子どもたちは、これまでの長いみちのりを僕に思い出させてくれました。三年生の43名の子どもたちは、遺伝子組み替え食品や健康、栄養、皆が食べているスナック菓子等がどう関係し合っているか話してくれました。この地方の郷土料理の「しもつかれ」を一緒に味わいなら、あと1日歩けばゴールという僕は、これまで歩き続けてきた4カ月のことをいろいろ思い出していました。

 最初に発表をするグループの子どもたちが「これからわたしたちの発表を始めます」と声をそろえて言って、この学期に学習した食べ物のことについて発表を始めました。

 三人の女の子がテーブルのそばにすわると、一人だけ立っいた女の子が、食べ物がいかに健康に影響するかを説明し始めました。「わたしたちが食べた物は血液や筋肉になります」とその女の子は言いました。他の子どもたちもそれぞれに、どのようにして食べ物がわたしたちのエネルギーになり、健康を維持するに必要かを説明しました。発表グループは次々に交代していき、発表はスナック菓子についての賛否や、どんなスナック菓子が一番好まれているか、昔のスナック菓子、食品添加物、そして最後に大豆やとうもろこしのような遺伝子組み替え食品の輸入について感じていることへと進んで行きました。僕は発表をきいている子どもたちに交じって床にすわり、一緒に発表に耳を傾けました。数名の生徒が、僕が簡単なメモを取る度に、おもしろそうに僕のまわりに寄って来ました。

グループの一人が説明を始め、他の子供たちはテーブルのそばに座りました=栃木県河内町岡本北小学校で

 子どもたちの食べ物への問題意識は、あきらかにフランスのベルビュー高校の生徒からのメッセージから生まれたものでした。子どもたちはそのメッセージから、フランスではアメリカの遺伝子組み替え食品の輸入に反対していることを知ったのです。遺伝子組み替えの食品が人間の体にどのような影響をおよぼすかを心配した一人の子どもは、自分が育てていた野菜も遺伝子組み替えをされているかもしれないと心配していました。遺伝子が組み替えられた野菜は育ちもよく、病気にも強いのかもしれないけれど、子どもたち全員が、「アメリカの農家の人たちは、遺伝子の組み換えられた作物を栽培するのを止めるべきだ」ということで意見が一致しました。

 ある種の食べ物が自分たちの健康に与える影響に気付いた生徒たちは、食品添加物について調べ、自分たちが食べているスナック類には体に害のある添加物がたくさん入っているということを知りました。

 もっとも注目すべきことは、この学習を通して何人かの生徒が自分の食習慣を変えたということだったと思います。「毎日の食べ物に気を付けるようになりましたか?」とたずねると、数名の生徒の手が上がりました。「これまでよりもっと果物を食べるようになりました」と一人の生徒が答えると。別の生徒も「添加物の少ない食べ物を選んでいます」と言いました。

 何人かの生徒たちが毎日の食事をよい方向に変えていくことや、食物について学ぶことに関心を持つことの必要性を訴えている時、タイミングよく三年生担任の大西先生が栃木県の郷土料理の一つの試食品を持って来ました。その料理も僕がこの「知恵めぐり」の旅で見つけてきた知恵をとてもよく取り入れているものでした。遺伝子組み替え食品についての討論によって高まっていた子どもたちの意識は、家庭の方に数歩近付いて行きました。

 「『しもつかれ』がどんな料理か知っている人?」とたずねると、勢いよく、またある子どもはおずおずと手を上げました。「実際に食べたことがある人?」とたずねると、何人かの子どもが手を下ろしました。

 「しもつかれ」は昔から受け継がれている郷土料理で、立春の前日の節分を祝った後に作られる料理です。節分にまいた豆の残りや正月に食べた鮭の残った骨や頭を、酒粕や冬の野菜として保存しておいた大根や人参をすり下ろしたものと一緒に煮込んだものです。一度つめたく冷やした「しもつかれ」を、あたたかいご飯の上に乗せて食べます。この料理はすべて残り物を材料としており、何一つ捨てられるものはありません。その上にその栄養価値は、もっとも健康的な食物の部類に入れられています(皆さんの地方にもこのような料理がありますか?)

 つめたく冷えたタッパーウエアーのふたを開けて、大西先生が「しもつかれ」について説明しました。その料理には鮭の頭が使われていると聞いて、少しひるんだ子どももいたようです。子どもたちがためらうのではないかと思ったので、僕は「一緒にたべよう」と、皆をさそいました。子どもたち全員が元気に立ち上がって列に並んだのを見て、僕はホッとしました。2杯、3杯とおかわりをしている子どももいました。「おいしい!」と言っている子どもも何人かいました。

 「しもつかれ」を口にいれると、その味が僕を4カ前に引き戻してくれました。「知恵めぐり」の旅に出発した北海道での二日目、鮭の頭と骨の入った鮭味噌を御馳走になりました。「しもつかれ」の中に入っている鮭の頭から出る少しピリッとした味は4カ月前の味噌の味と同じものでした。

 この4カ月間を振り返ると、いろいろな地域の味、そしてそこで出会った人々の顔、そしてこの「知恵めぐり」の旅を支援えしてくれた人たちのことが、僕の目の前に次々に浮かんできました。今日このような機会を与えてくれたことを岡本北小学校の皆さんに感謝しています。

 明日僕は東京の日本橋に向かって歩きます。「知恵めぐり」の旅の前半の最終地点です。小学生、中学生、高校生、WSNのボランティアの人たちと、ゴールまでの12キロを一緒に歩きます。

 「知恵めぐり」の旅は続きます。

 グレッグ

 (翻訳 大橋千都子)

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